こんなに急速な円安で輸入品の購入が高くなると12月ごろに、消費者物価に反映されるようになる。株高は一時的なもの、ここで海外投資家は売りにでて利益確保になるので、来週は株は下がり15000円台の半ばまで下がると思われる。

本日(10月1日)午前11時過ぎに円は一時1ドル=110.09円と、リーマンショック直前の2008年8月以来の110円台となりました。

 当時を少し振り返っておきますと、円キャリートレード(後述)が世界の投資資金を支えていた2007年6月に1ドル=124.12円まで円安が進みました。その後サブプライム問題の深刻化とともに円高となり、投資銀行のべアー・スターンズが経営危機(JPモルガン救済合併)となった2008年3月に一時1ドル=95.69円まで円高となったものの、2008年8月には再び1ドル=110.64円まで円安に戻っていました。

 本日の110円台は、この時以来の円安となります。

 ところが2008年9月のリ-マンショックを含む世界金融危機で、わずか3か月後の同年12月には1ドル=87.11円まで円高となりました。

 大変重要なことは、リーマンショック以前は世界中で投資需要が溢れかえっており、それに対して量的緩和が行われていたのは2001年3月~2006年3月の日銀だけだったので、結果的に世界中で円資金を調達して外貨に交換して(海外の)資産を購入する「円キャリートレード」が活発に行われ、円安が加速していました。

 逆にベアー・スターンズの経営危機やリーマンショックを含む世界金融危機をきっかけに、世界中で資産価格が急落したためその原資として調達・外貨に交換されていた円が一気に買い戻され、急激に円高となりました。

 

 この辺りから、世界経済が混乱したときに「安全資産である円が買われて円高になる」との間違った解説が定着し、いまだにそのままニュースなどで使われています。

 もう一度繰り返しますが本日の110円台は、このリーマンショック直前に一時的に円安に戻っていたときの水準です。当時はまだ世界中で投資需要が剥落しておらず、円資金の調達・外貨への交換(つまり円売り)もまだ高水準だった時期です。

 それでは現在も、円が世界中で調達されて外貨に交換されて円安となっているのでしょうか?

 確かに現時点では、FRB量的緩和が今月中に終了し来年のどこかで利上げが行われると考えられており、逆に日銀では2回目の消費増税決定を年内に強行するために(2%の物価上昇実現のためとしていますが)躊躇なく金融緩和(量的緩和のことです)を行うと息巻いています。

 

 ところが肝心の世界の投資需要は、株式市場や国債市場は好調ではあるものの、設備投資や資源開発投資は明らかに過剰気味であり、住宅市場を含む不動産投資も決して好調とは思えません。

 それよりも世界中で緩和マネーが溢れかえっているため、わざわざ円を調達して外貨に換えて投資する必要は全くありません。

 つまり世界中の円の需給関係は、リーマンショック以前と現在では全く違います。この状態にもかかわらず円は当時(2008年8月)の円安水準に並んだことになります。

 確かに日本の経常収支の黒字幅は大きく減少して赤字転落寸前となっていますが、この傾向は今に始まったことではなく、最近の急激な円安加速の説明にはなりません。

 直近の円の対ドル相場は、7月10日の101.06円と7月18日の101.08円をダブルボトムとし、オバマ大統領のイラク空爆指示のあった8月8日の101.50円が唯一の「押し目」であり、1か月前の9月1日でも104.34円(NY終値)でした。

 つまり円は対ドルで「ほんの1か月ちょっとの間」に急落したことになります。

 どうしてでしょう?

 日本政府と日銀による意識的な円安誘導と、米国政府とFRBによるドル高誘導と、日本人投資家(機関投資家公的資金を含む)による猛烈な仮需のドル買いの「複合要因」と考えます。

 アベノミクス開始以来の円安は貿易赤字を拡大して輸入物価を急上昇させました。最近の円安加速は、ここから1~2か月の間に発表される貿易統計や物価統計をさらに悪化させるはずです。まさに一部の輸出大企業を除けば「弊害」しかない円安加速となります。

 しかし日本全体で考えれば、もっともっと大きな「弊害」があるのですが