■ 2015年の展望―日本の政治 ―安倍首相、自民総裁選再選目指す―

時事通信社 政治部次長 水島 信


 戦後70年の節目となる2015年がスタートした。9月の自民党総裁選で再選を目指す安倍晋三首相にとって、自身の経済政策「アベノミクス」を推進し、景気回復を実現できるかが問われる。歴史認識に焦点が当たるこの年、中国などとの近隣外交をどう展開していくかも焦点だ。野党陣営では、「自民一強」の構図を崩すための連携の在り方が模索されることになる。
第1次、第2次阿倍政権時代に党内に後継者が育っていない。安倍政権内の人物は安倍色に染められ、党内での新鮮さや反安倍勢力にならない。安倍政権の官製経済政策を一掃するもの、外交政策もアメリカの今の政権と一線を画す、日米同盟を目指す政権との関係づくりを進めることや韓国、中国との関係改善ができる勢力が台頭することが求めrされる。それには、中道・左派が7割になり、この
中から3人~4人の総裁候補者が育っていなければならない。政策の違いでまとまりがいまいちの民主党には、そのような存在がいる。いまの自民党にはいない


◇「アベノミクス」の成否カギ
 首相は1月5日、三重県伊勢市での年頭記者会見で「アベノミクスという種はこの2年間で大きな木へと成長し、今、実りの季節を迎えようとしている。経済対策を早期に実行に移し、さらに実りあふれる大木へと成長させていかなければならない」と述べ、経済成長への決意を表明した。16年夏の参院選までは大型の国政選挙が予定されていない中、首相としては今年を、長期政権の実現に向けて実績づくりに励む年としたいところだ。
 消費税率の10%への再増税を17年4月まで先送りし、衆院解散を仕掛けた首相。昨年12月の衆院選では、自民党が追加公認を含め291議席を獲得する大勝に導き、求心力を一気に高めた。
 9月に自民党総裁の任期切れを迎える首相に対し、有力な対抗馬は見当たらない。前回総裁選で首相と接戦を演じた石破茂地方創生担当相も首相続投の流れには逆らわない構えで、石破氏周辺からも「この状況なら安倍氏の無投票再選だ」との声が出ている。
 首相自身も無投票再選への環境を整えるため、着実に布石を打っている。昨年末には景気の下支えに向けた3.5兆円の経済対策を決定。同時期に決めた与党税制改正大綱では、法人税に関して自民党税調や財務省の慎重論を押し切って、代替財源を上回る規模の実効税率引き下げを盛り込んだ。
そもそも、対抗馬をつぶしたり、取り込むだからで、決して次期政権にはよい影響がでない。党のイメージのマイナスである。党の民主的運営がなされていない。金と人脈が渦巻く自民党。まるで独裁某国のような仕組みなってきていると思われる。自由さなどなく、企業からの政治資金を政権化(私物化)して政権をコントロールしていると考えてもおかしくない。
 歴代政権の中でも金に汚いと言われてもしかたがない。経済界と政界の癒着が半端でない、それは
首相も外遊に同行している経済界関係者が今までにない数である。
 今は、経済政策がある程度の成果を上げているところがあるので、国民はこれに乗っているが、これが壊れて、財政破綻の心配になれば、マスコミはここをついてくる。トップセールでも、成果があがらなければ、その責任と使った税金の返還を求めることもあるかもしれない。

関連図:「政治日程」



 年明けの6日に経済3団体が東京都内で開いた新年祝賀パーティーに出席した際は、賃上げについて「経営者は『やるなら今でしょ』ということで、ぜひ取り組んでほしい」と財界幹部に直接呼びかけた。首相は1月召集の通常国会で、景気対策を盛り込んだ14年度補正予算案と、総額96兆円超の15年度当初予算案を速やかに成立させ、景気回復への道筋を固めたい意向だ

◇改革、抵抗も
 順風満帆に見える安倍政権の前途だが、経済再生が思うように進まなければ、逆風に見舞われかねない。自民党幹部は「アベノミクス効果がでなければ、『首相はうそつきだ』ということになる」と警戒感を隠さない。
 首相は成長を阻んでいる「岩盤規制」打破を掲げ、農業、医療、雇用、エネルギー分野での規制改革に取り組む方針だが、いずれの改革でも自民党支持団体の反発が予想される
 欧州経済の低迷などが日本経済の回復を阻害する懸念もあり、成長が賃上げにつながる「好循環」が実現するとは限らない。首相が決断した消費税再増税の先送りが財政再建の後退と受け止められれば、日本国債が急落し、金利が上がるリスクもはらむ。有効求人倍率の好転や高い株価などが安倍政権の人気を支えてきた面が強いだけに、首相にとっては経済運営により神経を使う一年となりそうだ。

◇安保法制、公明と溝
 安全保障法制をめぐる論議も、進め方を間違えれば政権の不安定要因となりかねない。1月召集の通常国会は、集団的自衛権の行使を可能にする14年7月の閣議決定を法律として整備することが課題となる「安保国会」(谷垣禎一自民党幹事長)だ。ただ、安保法制の具体像で自民党は、連立を組む公明党と温度差がある。
 集団的自衛権の行使に関し、自民党は「日本の存立」が脅かされるようなケースを「存立事態」という概念で括り、自衛隊法や武力攻撃事態法に明記するものの、それ以上の制約は設けない案を検討している。海外での自衛隊の活動の余地を担保しておくためだ。例えば、中東のペルシャ湾での自衛艦による機雷掃海活動についても、「経済パニックが起こるようなら『存立事態』に相当する」(国防族議員)として、可能にすべきだという意見が多い。
 これに対し公明党は、厳格な歯止めが必要だとの立場で、自衛隊の活動は日本周辺に限定したい意向だ。ペルシャ湾での機雷掃海には、首相も前向きな発言を繰り返しているが、強引に法整備を進めれば、公明党との関係がぎくしゃくし、4月の統一地方選にも響くことになる。影響を最小限に抑えるため、安倍政権は関連法案の提出を統一地方選後に先送りすることを検討している。
◎国民は、安保法制案が衆議院を通過したあとでも、国民の70%以上の反対があることに、このままでは、すまない事態になっている。これが阿倍政権の命とりになるとおもわれる。
◇「歴史認識」で緊張も
 中国などとの関係でも、慎重なかじ取りを迫られる。首相は昨年11月、中国の習近平国家主席との首脳会談を行い、日中関係は最悪期を脱した。しかし、沖縄県・尖閣諸島をめぐる対立など、火種は残る。日韓関係では、朴槿恵大統領との二人での首脳会談は実現できない状態が続く。従軍慰安婦問題をめぐる溝で改善の兆しは見えず、外交課題は山積している。
 首相は8月の終戦記念日に合わせ、戦後70年談話を発出する予定で、年頭の記者会見では「先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、アジア太平洋地域や世界にどのような貢献を果たしていくのか、英知を結集して考えを書き込んでいく」と表明した。
 首相は1995年の村山富市首相談話を含め「歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく」として、関係国への一定の配慮を示している。ただし首相は、談話をより「未来志向」の内容としたい考えで、首相周辺には、村山談話に明記された「植民地支配と侵略」「痛切な反省」などの表現については、変更を求める声も強い。
 一方、中国や韓国は安倍政権の対応を注視しており、70年談話が「歴史修正主義」と受け取られるような内容になれば、中韓との関係が緊張するのは必至だ。
 米国内にも安倍政権を「国家主義的」と見る向きがあり、米政府も歴史認識をめぐる首相の動向に神経を尖らせている。首相は今年前半に訪米し、オバマ大統領と会談したい意向。訪米には、同盟関係の強化や環太平洋連携協定(TPP)交渉での協力に加え、歴史認識に関して米側の懸念を払しょくする狙いもありそうだ
 70年談話に関して首相は、有識者会議を設けて文言を詰める考えだが、関係国との摩擦を避けつつ日本の立場を打ち出すのは容易ではない。

◇拉致再調査、7月で1年
 対北朝鮮外交でも成果が求められる。今年7月には、北朝鮮が日本人拉致被害者らの再調査に着手してから1年を迎える。調査期間を「1年間」とする日本側は、誠意ある回答を引き出して拉致問題を前進させたい考えだが、予断はできない。北朝鮮はサイバー攻撃をめぐって米国と対立を深めており、そのあおりで拉致に関する回答がさらに遅れる懸念がある。
 安倍政権が重視してきたロシアとの関係では、プーチン大統領が今年の「適切な時期」に来日することになっている。しかし、ウクライナ問題でロシアと欧米の対立は続く。日本には欧米と歩調を合わせる必要があり、大統領の来日を具体化させる道筋は見えてこない。首相は北方領土問題の進展を目指すが、日ロ関係を深めるには環境が厳しいのが実情だ。

◇原発、春にも再稼働
 今年は原発再稼働に関しても重要な局面を迎える。安倍政権は、原子力規制委員会が新規制基準に適合していると認めた原発は再稼働させる意向で、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)は春にも再稼働する公算。関西電力は高浜原発3、4号機(福井県)の年内の再稼働を計画している。
 国内の原発48基は13年9月から全て停止した状態が続いており、原発停止による火力発電用燃料の増加で電気料金は値上がりし、企業コストを押し上げている。首相が最優先する経済成長の阻害要因にもなっており、政権は原発再稼働を急ぎたい考えだ。
 ただ、東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故により避難を強いられている住民がいまだに多い中での再稼働に対しては、世論の反発も必至。政府は再稼働に不可欠な地元の同意を得るため、安全対策などに関して丁寧な説明に努める方針だ。
九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)は8月に再稼働したが、原発再稼働反対の世論も60%をこえている。地元は経済活動の活性化で賛成、周囲の自治体は事故の影響の配慮がなされれていないことで反対である。地元が知らなければならないのは、福島原発事故の事実、これを他人事にしてはいけない。福島も安心・安全で信じていた。しかし、事故はおこったのだ。このことを学んで欲しい。
◇野党、再編めぐり綱引き
 民主党など野党にとっては、巨大与党に対峙(たいじ)する態勢をどう整えていくかが課題となる。民主党は1月18日の代表選で、衆院選で落選した海江田万里氏の後継代表に経験豊富な岡田克也氏を選出。通常国会で岡田氏は、経済政策や外交・安全保障政策で安倍政権に論戦を挑み、統一地方選での反転攻勢を目指す。代表に選出された後の演説で岡田氏は、「政権を担っていく政党と思ってもらえるよう、安倍自民党としっかり戦っていく」と訴えた。
 岡田氏は、維新の党などとの合流を含む野党再編には否定的で、他党との協力は国会での共闘にとどめる考え。代表就任の記者会見で岡田氏は、「現時点で維新と同じ党となることは、到底考えられない」と明言した。
 ただ、代表戦での論戦では、細野豪志氏が昨年11月に維新との合併を検討するよう執行部に持ち掛けてきたと岡田氏が暴露、波紋を呼んだ。岡田氏は、代表選で争った細野氏を政調会長として執行部内に取り込み、党内融和を図る考え。しかし、民主党内には、「労組依存」が指摘されている現在のままでは安倍政権に対抗できないとして野党再編を志向する勢力があるのも事実で、岡田氏が党運営に苦慮する場面も出てきそうだ。
 維新の江田憲司代表は将来の再編を見据え、民主党の支持母体である連合との政策協議に意欲的。再編を含む野党の連携の在り方をめぐり、民主党と維新の主導権争いが活発化しそうだ。
 野党側の準備不足を突き首相が昨年11月に衆院解散に踏み切った経緯から、野党内には16年の参院選に合わせたダブル選挙を警戒する声が出ており、野党再編を求める機運が急速に高まる可能性もある。

◇三重など10道県で知事選
 今年は4年に一度の統一地方選が実施される。与党はアベノミクスを地方に浸透させ、地方選でも勝利を目指す。党の立て直しが迫られる民主党や維新などにとっても、組織の足腰を固める重要な戦いとなる。
◎アベノミクスの地方には透はうまくいっていない。安保法制も逆風になってている。なぜか、東京中心化がさらに進んでいる。観光立国化でも恩恵は大都市のみ、オリンピック招致での恩恵も東京圏が
中心である。これで、地方創生どころか地方の事業が減り、都市に流れ、若者も都市へ、益々人口格差が進み、地方の高齢化、人口減少、経済格差が更に進んでしまう。まとめていうと地域格差がさらに広がることになる。